読了 日本は悪くない悪いのはアメリカだ
仏暦2552年06月25日 木曜日
下村治 1987年 日本は悪くない悪いのはアメリカだ ネスコ
2008年、所謂リーマンショック以降本書は文藝春秋社から再販売された。その記述があまりにも適切で、現代においてもそのまま通用すると見做されたからである。
本書の主張は簡明である。1987年当時のレーガン大統領による”サプライサイドの経済運営”即ちその実態は富裕層に対する大幅減税と軍事費の大幅増大による景気振興は一時的な需要増大である、とする。内需が喚起されたのに生産力が伴わないから輸入が増える一方となる。日本の好景気なるものはこのアメリカの一方的な需要増大によって間接的に齎されたものに過ぎず、当然これに伴ってアメリカの貿易赤字は莫大なものとなるのであり、日本の黒字が問題の根源であるかのような言説は妥当ではない、とする。当然対処も、アメリカが大量の消費を止め、それに伴い日本も経済規模を縮小するべきだとする。
本書は2009年現在における日米貿易及び資本流通の過程をそのまま指摘しているとすら言える。つまり、22年間に亘って両国の経済関係は基本的に変化しなかったのだ。生産力が低下する一方なのに野放図に消費をし続けるアメリカ。それによって低下する一方の$への信任。貿易黒字国から只管還流される事でかろうじて維持される$。日本に代わって中国が商品の強力な供給者とアメリカ国債の購入者として登場した以外には、殆ど現在の状況を批判した書であるとすら言える。つまり、
「22年間、問題は何も解決していなかった」
のである。
本書は$の崩壊は突然やって来るだろうとしているが、更に22年も問題が只管大きくなっていたのならば、$崩壊の時の衝撃は只管大きくなって当然だろう。今、$の一部分即ち$紙幣に代わって発行された言うなれば偽金に相当する様々なアメリカの債券が崩壊しただけで世界はこの体たらくである。アメリカが国債を返済しないだろうとの主張もあり、アメリカ国債の格付けすら切り下げられる見通しだ。これは既にこれら偽金が単なる債券だったと言う事で実行に移されている。
経済の基本は国民にどうご飯を食べさせるかと言う事だ、と言う根本的な主張も、ご立派な改革によって失業者が溢れ返っている現在、まっとう至極に写る。
本書の主張に瑕を求めるならば、下村が優れたマクロ経済学者であっても優れた社会学者・政治学者・心理学者・技術者等々ではなかったと言う水準の話になる。アメリカがどうして過剰消費を満たす生産力を国内に求める事が出来なかったのか、と言う分析が行われていない。先般紹介した板坂1973年等のように、アメリカ人の勤労意欲の低下→商品そのものの劣悪化の指摘は多かったのである。また、日本の過剰な生産力なるものをもっと日本人の幸福なり日本の国際的地位の向上に使う事が出来なかったのは何故なのか、と言うこれまた先般紹介した真野1990年のような視点もない。
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