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住むために戦う

仏暦2551年12月04日 木曜日

 アメリカカンザイシロアリの被害が徐々に拡大しつつある由。

 日本に従来から生息しているヤマトシロアリとイエシロアリは何れも大きな巣を作り、基本的に湿った材を食害するそうな。特に、イエシロアリは水を自分から運んで木材に水分を与え食らうと言う器用な事をするそうで、被害は甚大なものになるとの由。ところが、アメリカンザイシロアリは”アメリカ乾材白蟻”でして、材が特に湿っていなくても食害するとか。

 勿論、水分が不足しているような所とてさして大繁殖は出来ない。だが、その代わりあらゆる木材をぱくぱくしてしまう訳で、木造家具にも侵入し、引っ越しに伴って各地に点々と少しづつ生息範囲を広げているそうな。しかも、この白蟻は巣を作らず、一つの家族の大きさが小さいのも特徴とか。巣を作らないので発見も非常に困難。はっと気がついた時には、家の一番肝心な所がやられていると言う訳です。

 これらは、人間の移動に伴ってあちこち生息場所を広げるのに絶好の生態と言うべきです。白蟻は女王・王または副女王・副王のペアがないと繁殖しない。ある一つの家族が巨大である場合、女王等が人間の移動に伴って移動する可能性は極めて低くなってしまいます。家族が小さいと家族まるごとの移動が可能。成る程、白蟻は番いを形成する際に羽蟻になりますが、やはり昨今の人間の移動能力はこれを上回ると思われますので、アメリカカンザイシロアリの生態は思いがけない有利さを発揮します。

 それにしても、木材の家がエコロジカルだなんてかなりのウソとしか言いようがありません。白蟻の被害を防ぐために、大量の薬剤が使われるのが昨今普通なのでは? 特に、最初に木材をきちんと薬剤処理せず後から散布するとなると、薬剤の害が甚だしいようです。

 だから日本の風土では、家も使い捨てるものとするのは、それなりに合理的です。だが、それだと密閉性を確保しての良好な生活の形成に反します。寒く、暑く、火災と地震に弱い家になってしまう。

 以上の観点からも、日本の建設は知恵と知識と計画性を十分に練り込んだものになっていなければならないのですが、地主の取り分ばかりが多くて、建物は安物で風通しも日当たりも悪く変形した手狭な一戸建てを超大量に作ってしまいました。東京近辺の建て売り一戸建ては、どんなに狭い土地でも、建物の価格よりも土地の値段が高い状態で売られるのが普通です。建物をきちんとしたものにすると、余りにも高くなってマトモに働いている人は誰も買えなくなるからです。斯くして、暑く・寒く・火災と地震にも弱く、生活のための様々な施設からも遠い一戸建てが大量に作られてしまいました。今や手遅れと言わざるを得ません。

「日本人がマトモに住まおうとすると、暑さ・寒さ・天災に加えて白蟻よりも、まず地主と戦わなければならない」

ように見えます。

          †

 それにしても、今は木造住宅でもそれなりの密閉性が確保されているから住宅の食害害虫は白蟻だけで済んでいます。物理的に木材部分に侵入できるほど小さい虫が白蟻程度だからです。

 だが、昔のように密閉性がない住宅では大黒柱と言えどももっと多様な昆虫に食害されたのではないでしょうか? 白蟻に次いで木造住宅をぱくぱくしそうなのが、カミキリムシの類。勿論、湿れば木材はカビの攻撃を受けます。

 このような木材の劣化を防ぐため、かつての木造住宅はかなり長期間乾燥させた材でもって建てられたようです。一寸昔の”家を建てるためには”の類のハウツー本には何れも十分に乾燥させた材を使っているか、と言うようなチェック項目がありました。また、ヒノキ等が上等の建設材とされたのは、これら定評のある木材は昆虫やカビ等を寄せ付けない植物自身の防御物質がふんだんに含まれており、これが人間にとっても良い香りだったからです。今日の多くのいい加減な木造一戸建て住宅ではそうは行かないでしょう。

 日本は段々貧乏になりますから、本来であれば立て直すべき木造一戸建て住宅に我慢して住み続けるしかなくなります。密閉性を維持している壁等も少々破れても目を瞑ると言う事になる。やがて、

「ぎゃ〜、カミキリムシ! バシッ!」

と、ゴキブリのごとくカミキリムシが嫌われる時代が来るかも。

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